遊覧通信 その3
~歩道橋とあんぱん~
むかし出勤の時に毎朝見ていた歩道橋が取り壊されてなくなったことがあった。
毎朝何気なく見ていた歩道橋だったが、あまり使う事はなかった。
それでも年に数度、道路向こうの喫茶店に行く時だけその階段を上ったりした。
その喫茶店の店主はいつも青いキャップをかぶっていて、
暇なときはカウンターの奥でスポーツ新聞を読んでいた。
メニュー表のナポリタンの写真の横に、あんぱんも写真付きであったので、
もしかしたら名古屋出身の人なのかもしれない。
街から歩道橋がなくなって、寂しいかといえばそうでもないが、
もっと使ってあげてもよかったかなと思う。
喫茶店に行くときだけじゃなく、意味もなく階段を上ってみたり、
写真だって一枚くらいとっておけばよかった。
かつてこの場所に「〇〇橋」が架かっていたというパネルを街で、見かけることがある。
それはパネルになるほど歴史的な橋だったりするわけだ。
かつてこの場所に「歩道橋」がたっていたりもした。
そんな普通のパネルがあってもいいと思ったりもする。